tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「研究開発投資から海外直接投資へ」と日本経済の現状

2019年04月24日 12時42分25秒 | 経済
「研究開発投資から海外直接投資へ」と日本経済の現状
 この3回ほど、研究開発投資の停滞と海外直接投資の盛況を見て来ました。
 問題はそれが日本経済に何をもたらしているかです。

 端的に言ってしまえば、これは「日本国内で生産するか」、「海外で生産するか」の選択です。そして、海外で生産すれば、日本のGDPは増えません。増えるのは「第一次所得収支(利子・配当収入)」です。そしてこれはGDPには算入されません。
 「 GDPを上回るGNIが日本の実力」と書きましたが、この「実力増の部分」は資本の力によるもので、「生産力」によるものではありません。

 トヨタが年「300万台の国内生産は守る」としたり、産業機械メーカーなどの多くが、心臓部分の開発・生産は国内で行うといった方針を持っていると聞きますが、こうした努力は「研究開発」から出発してより高度な製品は自分で作れなければ産業の将来はない、つまり産業として将来への見通しが立たないという長期的視点を持っているからという事にほかなりません。

 アメリカのように、世界中に生産拠点を持つものの、国内では、かつての生産拠点は「ラストベルト」で、結局、「第一次所得収支は黒字でも、貿易収支は大幅赤字で、経常収支は万円赤字」、関税障壁とドル安で自国経済を守らなければならないという「将来像」が待っているという事になるのではないでしょうか。

 単純に計算してみても、いま日本の第一次所得収支は年間約20兆円の黒字です。これは日本企業が海外で創出した付加価値の中から利子・配当として受け取っているもので、海外で創出している付加価値の1割以下でしょう(7割が人件費、3割が資本費として、その半分を利子・配当として受け取っても7.5%)。

 つまり7.5円の第一次所得収支を得るという事は、海外で100円の付加価値を創っているろいうことなのです。
 逆にえば、7.5円の第一次所得収支を得るための海外直接投資を国内でやれば、GDP(付加価値)が100円増えるという事です。
日本の海外直接投資がもっと少なくて、その分国内に投資し、20兆円の第一次所得収支が12.5兆円だったら(7.5兆円少なかったら)、日本のGDPは100兆円多くなっていただろう、ということになるわけです。

 こんなのはまさにメノコ算(メノコメトリクスと言うそうです)ですが、「当たらずと雖も遠からず」かもしれません。
 もしそんな事になったら人手不足で大変かもしれませんが、「窮すれば通ず」で労働生産性を上げて対応するのでしょう(日本の労働生産性はアメリカの62%、ドイツの85%です:日本生産性本部2018年)。

 この所、日本の研究開発投資が盛り上がらないという所から出発しましたが、その背後には、為替レートへの不信・不安、海外企業の買収に走る企業、海外直接投資の著増、経常収支の大幅黒字、なかなか成長しないGDP、向上しない労働生産性と深刻な人手不足・・・、などなどの問題が複雑に絡み合っていることが見えてきたように思います。

 さて、アベノミクスはこれから何をしようというのでしょうか、相変わらずのポピュリズム、選挙対応中心、パッチワークの経済政策では、先は見えているような気がするのですが・・・。 

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